吾輩は猫である。名はまだないが、晴れた日の名誉顧問のような顔をして、縁側に寝そべっている。 このところ、雨ばかりだった。庭の草はぐんぐん伸び、飼い主は洗濯物とため息を交互に干していた。だが今朝、雲がほどけ、空が開いた。風は乾いて、空は青い。人間どもはこれを「五月晴れ」と呼ぶそうな。なるほど、うまいこと言う。 陽の光が、吾輩の毛をふんわりと温めてくる。ときおり風が通り抜け、鼻先に新緑の匂い。ただそれだけで、今日が良い日であることが、わかる。 人間はこの日を「洗濯日和」だの「お出かけ日和」だのと名づけては忙し ...