吾輩は猫である。名はまだない。 飼い主はよく言われる。「あなた、ほんと人たらしだよね」と。褒めているのか、呆れているのかは分からぬが、そのたびに吾輩は思う。――本当の人たらしは、ここにいる、と。 吾輩は特別なことは何もしていない。必要以上に鳴かず、欲しいときだけ近づき、撫でられたいときには、ほんの少しだけ背中を差し出す。 それだけで、人は勝手に心を許す。 宅配の人、来客、初対面の獣医殿。誰に対しても吾輩は同じ態度だ。警戒しすぎず、愛想を振りまきすぎず、ただ「ここにいる」。 すると人は言う。「この子、不思議 ...