吾輩は猫である。名はまだない。だが、この町では「猫神様」と呼ばれている。 きっかけは偶然だった。ただ神社の屋根で昼寝をしていただけなのに、参拝に来た人が手を合わせ、「ご利益がありますように」と頭を下げたのだ。 次第に噂は広まり、受験生は「合格祈願に猫神様」、商人は「商売繁盛を猫神様」、恋する娘は「縁結びも猫神様」とやって来る。吾輩はただ、鈴虫の声を聞きながらのんびり毛づくろいしていただけなのに。 ある日、子どもが怪我をした足を引きずって神社に来た。吾輩はそっと足に寄り添い、しっぽでちょんと触れた。それだけ ...