吾輩は猫である。名はまだない。 この秋は、どうにも慌ただしい。飼い主が立て続けに礼服を取り出し、「またご祝儀だ」「次は京都だ」と嘆いている。どうやら「結婚式ラッシュ」なるものが到来しているらしい。 玄関には引き出物の紙袋が積まれ、カタログギフトや菓子折りが次々と運び込まれる。吾輩は箱のリボンを解く役目を買って出るが、人間は「こら、やめて!」と大慌てだ。 結婚式というのは、人が集い、笑いと涙を分かち合う特別な場だという。だが吾輩の眼には、慣れぬ靴で足を痛め、ご祝儀袋に財布を軽くし、二次会で疲れ果てる飼い主の ...