吾輩は猫である。名はまだない。 白くて、小さくて、においのしない敵が現れた。――錠剤である。 飼い主は優しい声で言う。「すぐ終わるよ。」だが、その言葉を信じてよい結果になった試しは少ない。 まずは、おやつに混ぜる作戦。吾輩は一口で見抜いた。味ではない。“違和感”である。猫は、違和感の専門家だ。 次は、喉の奥に入れる正攻法。口を開けられ、上を向かされる。吾輩は全力で抵抗した。四肢、しっぽ、視線、すべてを使って拒否する。 「お願い……」飼い主の声が、だんだん必死になってくる。吾輩は思った。――これは勝ち負けで ...