吾輩は猫である。名はまだない。 元日の朝、飼い主がマフラーを巻きながら言った。「初詣、行くよ。」どうやら人間界では、新年の始まりに神社へ挨拶をするらしい。 吾輩はキャリーに入れられ、すこし不満げに耳を倒した。だが、外に出ると冷たい空気が心地よい。冬の匂いは、なぜこんなにも澄んでいるのだろう。 神社に着くと、参道には人が並び、甘酒の香りがほのかに漂っていた。吾輩はキャリーから半分顔を出し、境内の景色を見渡した。 鳥居の向こうの空は青く、風に揺れる鈴の音が静かに響く。人々が手を合わせ、ひとつずつ願いを置いてい ...