吾輩は猫である。名はまだない。だが、魚の香りを5km先から感知する能力がある。 ある日の昼。飼い主が大きな紙袋をぶら下げて帰ってきた。 「ふふふ…今日のお昼は豪華だよ〜」キッチンに並べられた二つの丼。ひとつはまくろいくら丼。もうひとつは鮭しらす丼。 蓋を開けた瞬間、この世すべての“魚力”が解放された。 湯気よりも 誘惑立ちのぼる 昼の膳 飼い主は嬉々として言う。「今日は“自分へのご褒美”ってやつ」ふむ、ならば吾輩にも日々の癒しの対価が必要ではなかろうか。 一歩、また一歩と近づく吾輩。テーブルの端に手をかけ ...