吾輩は猫である。
名前はまだない。
もし、
猫だけの国があったなら。
人間は時々、
そんな想像をする。
人間はそれを、
猫王国と呼ぶ。
だが、
実際の猫社会は、
案外静かだ。
必要以上に争わず、
無理に群れず、
距離を保ちながら共にいる。
王はいるのか。
いや、
たぶん曖昧である。
力だけでは、
長くは保てぬ。
縄張り、
空気、
順番。
それらが、
静かに均衡を作る。
吾輩は思う。
本当に安定した国とは、
声が大きい者ではなく、
距離感を知る者が支えていると。
無理に支配せず、
必要以上に奪わぬ。
近づきすぎれば離れ、
離れすぎれば戻る。
それで、
全体は保たれる。
猫王国には、
法律は少ない。
だが、
暗黙の秩序はある。
日向は分け合い、
危険は察知し、
眠る時は、
少し安心する。
それだけで、
十分豊かだ。
吾輩は猫である。
王にはならぬ。
だが、
穏やかな縄張りの価値は知っている。
猫王国とは、
争わずとも成り立つ
静かな均衡の世界なのだ。
争わず
距離で保てる
猫の国