吾輩は猫である。名はまだない。
だが最近は、「〇〇士」づいている。
きっかけは、飼い主のつぶやきだった。
「次はFPでも受けるか〜、その次は応用情報かな…」
部屋の本棚には、カバーのかかった参考書の山。
吾輩はそれらの上に乗り、
気づけば毎夜、「共に勉強する猫」となっていた。
記憶術?
猫は元来、ルーチンと空間認識の生き物。
午前はキッチン下、午後は窓際、夕方は冷蔵庫上。
生活そのものがフラッシュメモリなのである。
記述問題?
キーボードの上を歩いて勝手に文字を打った吾輩のほうが、
飼い主より早いときすらある。
資格とは 猫の手貸して 取るもので
ついには飼い主も言い出した。
「ねえ、君も受かってるよね、実質」
――当然である。体温と眼差しで合格へ導くのが、吾輩の仕事だ。
今、壁には並ぶ。
「基本情報技術者」「情報処理安全確保支援士」
「危険物取扱者乙種4類」…それも、飼い主の肩書の陰に、
**見えぬ“猫の勲章”**として刻まれている。
だが満足はしない。
次は簿記か、宅建か、それとも行政書士か。
吾輩は本棚の新しいテキストに飛び乗る。
――資格とは、勉強という名の遊び場であるからして。