吾輩は猫である ―チケット当選 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、一通の知らせで、天にも昇る気持ちになることがある。 「ご当選おめでとうございます。」 その文字を見ただけで、顔がほころぶ。 吾輩は思う。 当たったのは、一枚のチケット。 だが、人間が本当に手に入れたのは、その先に待つ時間なのだ。 会いたかった人。 見たかった景色。 胸を躍らせる一日。 チケットは、紙でも、画面の中の数字でもない。 未来への約束なのである。 猫には、抽選はない。 お気に入りの窓辺も、昼寝の場所も、早い者勝ちだ。 だからこそ、人間が小さく飛び跳ねて喜ぶ ...
吾輩は猫である ―天空のプール 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 空と水が、つながって見える。 人間はこれを、天空のプールと呼ぶ。 水面は静かだ。 風が吹けば揺れ、風が止めば、また鏡のようになる。 まるで、心のようである。 吾輩は思う。 人間は、高い場所へ行くと、景色を眺める。 昨日まで大きく見えた悩みも、少し遠くに見えるからだろう。 見える景色が変われば、考え方も変わる。 だから旅は、人を成長させるのかもしれぬ。 猫は、高い所が好きだ。 棚の上。塀の上。窓辺。 そこから静かに、世界を眺める。 急いでも、景色は逃げない。 ゆっくり眺めれ ...
吾輩は猫である ―留守番 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 玄関の音がして、いつもの気配が消える。 部屋は静かになる。 人間はこれを、留守番と呼ぶ。 最初は、少し歩き回る。 窓を見て、お気に入りの場所へ行き、また戻る。 そのうち、静けさにも慣れる。 吾輩は思う。待つことも、信頼の一つだと。 いつ帰るかは、わからぬ。 だが、帰ってくることは知っている。 だから、安心して眠れる。 人間は、「寂しくない?」と聞く。 もちろん、少しは寂しい。 だが、一番嬉しいのは、玄関の鍵が回る音だ。 「ただいま。」 その一言で、部屋の空気が変わる。 猫 ...
吾輩は猫である ―ご褒美 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、頑張ったあとに、ご褒美を用意する。 美味しいものを食べたり、欲しかった物を買ったり、少し贅沢な時間を過ごしたり。 それもまた、生きる楽しみなのだろう。 吾輩にも、ご褒美はある。 お気に入りのおやつ。 窓辺で浴びる、午後の日差し。 主人に、そっと頭を撫でられること。 どれも、値段では測れない。 吾輩は思う。 本当のご褒美とは、何かを手に入れることだけではない。 今日も、最後までやり切った。 誰かの役に立てた。 昨日より、少しだけ成長できた。 そう思えた時、心は静かに ...
吾輩は猫である ―ネズミ王国 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 世の中には、猫の王国もあれば、犬の王国もあるらしい。 ならば、ネズミの王国も、きっとあるのだろう。 吾輩は思う。 猫から見れば、ネズミは小さな存在。 だが、ネズミから見れば、吾輩こそ巨大な存在である。 立場が変われば、世界も変わる。 人間も同じだ。 自分の物差しだけで、世の中を見てしまう。 だが、誰にでも、その人なりの世界がある。 王様にも、町のパン屋にも。 大人にも、子どもにも。 猫にも、ネズミにも。 互いの世界を知らぬままでは、分かり合えないことも多い。 だからこそ、 ...
吾輩は猫である ―猫技術士筆記試験 再チャレンジ 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 一度、届いた。 だが、その先で立ち止まった。 人間はこれを、再チャレンジと呼ぶ。 悔しさは、簡単には消えぬ。 「あそこを、もう少し。」 「こう答えれば、違ったのではないか。」 そんな思いが、何度も頭をよぎる。 吾輩は思う。挑戦とは、合格した者だけのものではないと。 転んでも、また立ち上がる。 その姿もまた、挑戦である。 参考書を開く。過去問を解く。答案を書き直す。 昨日より、一行でも良くする。 その積み重ねは、決して裏切らぬ。 人間は、結果だけを見る。 だが、努力は、結果 ...
吾輩は猫である ―猫踊り 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 音が鳴る。 気づけば、体が少し動く。 人間はこれを、踊りと呼ぶ。 上手い者もいる。リズムに乗る者もいる。少しずれる者もいる。 だが、笑っている者が、一番楽しそうだ。 吾輩は思う。踊りとは、技術を競うものではないと。 心が動いた時、体も自然に動く。 それだけで、十分なのである。 猫は、嬉しい時、尻尾が立つ。 楽しい時、駆け回る。 眠る前には、突然走り出す。 人間には理解できぬらしいが、あれも猫なりの踊りなのかもしれぬ。 誰かに見せるためではない。 今という時間を、楽しむため ...
吾輩は猫である ―盆踊り 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 提灯が灯る。 太鼓が鳴り、人が輪になる。 人間はこれを、盆踊りと呼ぶ。 上手い者もいれば、少し間違える者もいる。 それでも、誰も気にしない。 同じ輪の中で、同じリズムに合わせる。 それが、大切らしい。 吾輩は思う。盆踊りとは、競うための踊りではないと。 揃えることより、集まること。 見せることより、一緒に楽しむこと。 輪の中では、子どもも、大人も、久しぶりに帰ってきた人も、みな同じ。 故郷を離れた者も、この日だけは戻ってくる。 踊りは、昔から変わらぬ。 だからこそ、人は安 ...
吾輩は猫である ―海の日 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 波は、何度も寄せては返す。 急ぐこともなく、止まることもない。 人間はこれを、海の日と呼ぶ。 海へ出かけ、潮風を浴び、夏の始まりを感じる日。 だが、海は遊ぶ場所である前に、生きる場所でもある。 魚を育み、船を運び、遠い国とつながる。 そして時には、大きな力で、人間に試練を与えることもある。 吾輩は思う。海とは、優しさと厳しさを同時に持つ存在だと。 穏やかな日もあれば、荒れる日もある。 だからこそ、敬意を忘れてはならぬ。 人間は、海から多くの恵みを受けてきた。 食べ物も、物 ...
吾輩は猫である ―四季報 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 分厚い本を、人間は真剣な顔でめくる。 数字、会社名、業績、配当。 人間はこれを、四季報と呼ぶ。 未来を知りたい。 その思いで、一ページずつ読み進める。 吾輩は思う。投資とは、未来を当てることではないと。 未来を考え続けることだ。 良い会社にも、苦しい時期がある。 目立たぬ会社が、大きく育つこともある。 一冊の本に、答えは載っていない。 だが、考える材料は、たくさん載っている。 人間は、株価ばかりを見る。 だが、会社を見る者は、決算も、事業も、経営者も見る。 木ではなく、森 ...









