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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/3

吾輩は猫である ―米朝首脳会談 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 最近、海の向こうで、また二人の人間が会うかもしれないという。 アメリカの大統領と、北朝鮮の最高指導者。 人間はこれを、米朝首脳会談と呼ぶ。 以前にも、二人は会った。 握手をした。 笑顔を見せた。 世界中のカメラが、その一瞬を追いかけた。 吾輩は思う。 人間は、握手が好きである。 猫なら、いきなり前足を差し出されたら、まず警戒する。 少し離れる。 匂いを見る。 相手の目を見る。 それから、近づいてよい相手かを決める。 どうやら外交も、それほど違わないらしい。 アメリカは、核 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/3

吾輩は猫である ―北方領土訪問 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 海の向こうに、故郷がある。 見えているのに、自由には行けない。 人間はそこを、北方領土と呼ぶ。 国後島。 択捉島。 色丹島。 歯舞群島。 かつて、そこで暮らしていた人たちがいる。 家があった。 学校があった。 墓がある。 思い出がある。 だが、戦争が終わって八十年以上が過ぎても、自由に帰ることはできない。 吾輩は思う。 故郷とは、地図の上の色ではない。 子供の頃に歩いた道。 家族と食べた飯。 窓から見えた海。 そこに暮らした者にしか分からぬ、匂いのようなものではないかと。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/3

吾輩は猫である ―雨被害 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 雨は、静かに降る。 最初は、屋根を叩く音も心地よい。 だが、降り続けば話は変わる。 川が増え、道路が沈み、土が崩れる。 人間はこれを、雨被害と呼ぶ。 吾輩は思う。 怖いのは、雨そのものではない。 「まだ大丈夫」と、動かないことである。 水は、一気に増えることがある。 昨日まで通れた道が、今日は通れぬこともある。 だから、早めに見る。 天気を見る。 川を見る。 避難場所を確かめる。 そして、猫のことも忘れない。 キャリー。 餌。 水。 薬。 トイレ用品。 人間だけ逃げればよ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/2

吾輩は猫である ―可愛い来客 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 玄関の向こうで、いつもと違う声がする。 足音も、匂いも、少し違う。 人間はこれを、来客と呼ぶ。 吾輩は、まず離れて見る。 知らぬ者に、すぐ近づくほど軽率ではない。 だが、今日の客は少し違う。 声が柔らかい。 動きがゆっくりしている。 そして何より、吾輩を見る目が、妙に嬉しそうである。 人間は言う。 「かわいい。」 吾輩は思う。 それは、こちらの台詞かもしれぬと。 来客は、無理に触ろうとしない。 追いかけない。 大きな声も出さない。 ただ、少し離れた場所から、吾輩を見ている ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/2

吾輩は猫である ―中間選挙 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 アメリカでは、大統領を選んでから二年ほどすると、また大きな選挙がやってくる。 人間はこれを、中間選挙と呼ぶ。 中間。 なんとも、地味な名前である。 期末でもなく、最終でもない。 だが、人間たちは妙に真剣である。 勝った。 負けた。 政権への審判だ。 いや、まだ支持されている。 テレビでは、朝から晩までそんな話をしている。 吾輩は思う。 中間なら、もう少し気楽にしてはどうかと。 だが、どうやらそうもいかぬ。 大統領が何かをしたくても、議会の勢力が変われば、思うように進まなく ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/2

吾輩は猫である ―国際規格 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、国が違っても、同じように通じる決まりを作ろうとする。 人間はこれを、国際規格と呼ぶ。 寸法。 品質。 安全。 情報セキュリティ。 環境。 それぞれの国が、好き勝手なやり方をしていては、物も仕組みも、うまくつながらない。 だから、共通の物差しを作る。 吾輩は思う。 これは、なかなか大切なことである。 猫の世界でも、相手の尻尾が大きく膨らんでいれば、だいたい近づかない。 耳が後ろへ倒れていれば、少し距離を取る。 国は違っても、猫語には、それなりの共通規格があるらしい。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/23

吾輩は猫である ―ローカルLLM 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 最近、人間はAIを、遠くの大きな計算機だけでなく、自分のパソコンの中でも動かそうとしている。 人間はこれを、ローカルLLMと呼ぶ。 なるほど。 AIまで、家猫になったらしい。 クラウドへ行かず、手元で考える。 文章を読み、要約し、質問にも答える。 しかも、外へ出さずに済む情報もある。 吾輩は思う。 これは、なかなか猫向きである。 猫は、自分の縄張りを好む。 知らぬ場所へ、何でも持ち出したりはしない。 大切なものは、できれば家の中で扱う。 ローカルLLMも、少し似ている。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/23

吾輩は猫である ―GPU vs NPU なんじゃ?編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 最近、人間のコンピュータには、いろいろな頭脳が入っているらしい。 CPU。 GPU。 そして、NPU。 アルファベットばかりである。 吾輩は思う。 なんじゃ? まず、GPUという者。 もともとは、画面に絵を描く仕事が得意だった。 だが、同じような計算を大量にこなすのも得意だったため、いつの間にかAIまで働かされるようになった。 猫で言えば、一斉に百個の猫じゃらしを追えるような者である。 なかなか忙しい。 一方、NPUという者。 こちらは最初から、AIの計算を効率よくこなす ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/23

吾輩は猫である ―若手 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 若い者は、よく動く。 覚えることも多く、失敗することも多い。 人間はこれを、若手と呼ぶ。 任せれば、少し心配。 任せなければ、いつまでも育たない。 人間の世界は、なかなか難しい。 吾輩は思う。 若手に必要なのは、正解を全部教えることではない。 考える余地を残すことだ。 やってみる。 迷う。 相談する。 直す。 その繰り返しで、少しずつ自分の型ができていく。 猫も、子猫の頃は失敗する。 跳び損ねる。 距離を読み違える。 怒られて、少し学ぶ。 だが、何度も試すうちに、いつの間 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/23

吾輩は猫である ―猫友 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 猫を好きな者同士は、不思議と話が早い。 初対面でも、写真を一枚見せれば、会話が始まる。 「何歳ですか。」 「何匹いますか。」 「この子、よく食べますか。」 人間はこれを、猫友と呼ぶ。 吾輩は思う。 友とは、同じ趣味を持つ者だけではない。 同じものを、大切に思える者なのだと。 猫の話をする。 病院の話をする。 餌の話をする。 時には、看取りの話まで出る。 可愛いだけではない。 困ったことも、心配なことも、一緒に話せる。 だから、少し安心する。 人間は、自分の猫を褒められると ...