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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―液体窒素 イボ退治 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、体に小さなできものができると、しばらく様子を見る。 そのうち治る。 痛くないから大丈夫。 そう思っているうちに、なかなか消えない。 人間はこれを、イボと呼ぶ。 そして、病院へ行くと、今度はとても冷たいものが出てくる。 人間はこれを、液体窒素と呼ぶ。 吾輩は思う。 冷たいもので、なぜ退治できるのか。 聞けば、ものすごく低い温度で患部を凍らせ、少しずつ処置していくらしい。 なるほど。 熱して倒すのではない。 凍らせるのである。 人間の医療は、なかなか容赦がない。 処置 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―柚子残滓 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 柚子を搾る。 果汁を取る。 人間は満足する。 そして、残った皮や種を見て言う。 「これは残りだ。」 人間はこれを、柚子残滓と呼ぶ。 吾輩は思う。 少し待て。 ずいぶん良い香りがするではないか。 残りという割には、なかなか存在感がある。 果汁を取った後にも、皮には香りが残る。 そこから精油を取る。 加工する。 飼料にする。 堆肥にする。 研究によっては、もっと別の材料にも変えようとしている。 捨てる予定だったものが、急に資源になる。 人間はこれを、循環利用と呼ぶ。 吾輩は思 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―豆腐インク 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、とうとう豆腐まで印刷しようとしているらしい。 吾輩は最初、聞き間違いかと思った。 インクといえば、紙に文字を書くものである。 間違っても、食卓に並べるものではない。 ところが人間は、豆腐を材料にして、三次元の形を作ろうとしている。 人間はこれを、豆腐インクと呼ぶ。 食べられるインクである。 吾輩は思う。 そこまでして、豆腐を立体にする必要があるのかと。 冷奴なら、四角いままで十分ではないか。 醤油を少し垂らせば、立派な一品である。 だが、人間の考えていることは、も ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―美肌菌 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、菌と聞くと、すぐに退治したがる。 洗う。 拭く。 除菌する。 消毒する。 ところが最近、「肌には残した方がよい菌もいる」と言い始めた。 人間はこれを、美肌菌と呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん都合のよい名前である。 昨日まで菌は敵だったのに、今日は美肌の味方らしい。 人間の評価は、なかなか忙しい。 肌の上には、さまざまな微生物が暮らしている。 全部なくせばよい、というものでもない。 互いに影響しながら、肌の環境をつくっている。 なるほど。 猫社会にも、少し似ている。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―築四十年 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 この家は、ずいぶん長く立っている。 柱には傷。 床には軋み。 壁にも、ところどころ時間の跡がある。 人間はこれを、築四十年と呼ぶ。 四十年。 猫なら、何代も入れ替わっている。 それでも、家はまだそこにある。 吾輩は思う。 古いというだけで、価値がなくなるものではないと。 新しい家には、新しい良さがある。 断熱。 耐震。 設備。 便利さ。 だが、古い家には、時間がある。 柱についた小さな傷。 昔置いてあった家具の跡。 何度も開け閉めされた扉。 そこには、暮らした者の記憶が残 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―デニソワ人編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、自分たちがどこから来たのかを、ずいぶん気にする。 祖先を調べ、骨を掘り、とうとう何万年も前のDNAまで読むようになった。 そして、小さな骨のかけらから、知らなかった人類を見つけた。 人間はこれを、デニソワ人と呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん少ない証拠から、ずいぶん大きな話になったものだと。 だが、DNAはなかなか正直らしい。 デニソワ人。 ネアンデルタール人。 そして、今を生きる人間。 昔の地球には、「人類」が一種類だけいたわけではなかった。 出会った。 すれ違った ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―ミニカー 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 机の上に、小さな車が並んでいる。 赤。 青。 黒。 大きさは違えど、どれも妙に精巧である。 人間はこれを、ミニカーと呼ぶ。 走るわけではない。 人を乗せるわけでもない。 それでも、人間は眺めて喜ぶ。 吾輩は思う。 本物でなくても、心を動かすものはあるのだと。 昔乗っていた車。 憧れていた車。 子どもの頃に欲しかった車。 小さな車の中に、人間は大きな思い出を入れている。 不思議なものである。 吾輩なら、転がるものを見れば、まず前足で触る。 少し押す。 動けば追う。 棚から落 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―参鶏湯 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、疲れると温かいものを食べたがる。 鶏。 高麗人参。 もち米。 にんにく。 いろいろ詰めて、ことこと煮る。 人間はこれを、参鶏湯と呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん手間をかけて、元気になろうとするものだと。 だが、悪くない。 弱った時ほど、派手なものより、ゆっくり体に入るものがよい。 熱すぎず。 重すぎず。 少しずつ、体の中へ染み込む。 人間は、疲れている時ほど頑張る。 「もう少し。」 「あと一つ。」 そう言いながら、さらに消耗する。 猫なら、しない。 弱れば寝る。 寒 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―充電 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、機械の電池が減ると、すぐに充電する。 スマートフォン。 パソコン。 車。 人間はこれを、充電と呼ぶ。 残量が少なくなれば、警告が出る。 赤くなる。 動きが鈍くなる。 だから、早めにつなぐ。 吾輩は思う。 人間自身にも、残量表示があればよいのにと。 疲れている。 眠い。 集中できない。 少しイライラする。 それでも、人間は動こうとする。 「まだいける。」 「もう少しだけ。」 そう言いながら、電池切れまで使う。 猫なら、そこまでしない。 眠ければ寝る。 疲れれば動かな ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/13

吾輩は猫である ―体脂肪計 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、体重だけでは満足しなくなった。 体脂肪。 筋肉量。 基礎代謝。 内臓脂肪。 数字が、次々と並ぶ。 人間はこれを、体脂肪計と呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん細かく、自分を測るものである。 乗る。 数秒待つ。 そして、画面を見る。 昨日より増えた。 減った。 人間の気分も、数字と一緒に上下する。 だが、一日で大きく一喜一憂するのは、少し忙しい。 吾輩は思う。 大切なのは、一回の数字ではない。 流れである。 少しずつ増えているのか。 減っているのか。 変わらないのか。 そ ...