吾輩は猫である ―ブシロード株主優待 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、会社の株を買う。 値上がりを期待する。 配当を待つ。 そして時々、何か送られてくることまで期待する。 人間はこれを、株主優待と呼ぶ。 ブシロードにも、株主優待があるらしい。 オンラインストアで使えるポイント。 そして、イベントへの招待抽選。 なるほど。 株主なのに、楽しみ方が妙にエンタメ寄りである。 吾輩は思う。 これは少し面白い。 普通、株主になるというと、 売上。 利益。 配当。 株価。 何やら難しい数字ばかり眺めることになる。 ところがブシロードの場合、 プ ...
吾輩は猫である ―住宅引越し 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 ある日、家の中に箱が増え始める。 昨日まで棚にあったものが、次々と姿を消す。 人間はこれを、引っ越しと呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん落ち着かない。 見慣れた匂いが減る。 いつもの寝床が動く。 人間も、妙に忙しい。 捨てる。 詰める。 運ぶ。 そして、また出す。 最初から動かさなければよいのではないかと、少し思う。 だが、人間には事情があるらしい。 広い家へ。 近い職場へ。 新しい街へ。 家族の都合で。 人生の節目で。 家を変える理由は、一つではない。 吾輩にとっては、理由 ...
吾輩は猫である ―クレープ、生地売り切れ 編(縁がない)―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、甘いものを食べたくなる時がある。 今日はクレープ。 頭の中は、もう決まっている。 生クリーム。 バナナ。 チョコ。 あるいは、少し大人しく、シュガーバター。 店へ向かう。 列も、それほど長くない。 これはいける。 人間は、そう思ったらしい。 だが、店の前に一枚の札がある。 「本日、生地売り切れ。」 吾輩は思う。 クレープ屋で、生地がない。 これは、なかなか致命的である。 猫で言えば、 「猫缶はあります。ただし中身はありません。」 と言われるようなものだ。 人間は、 ...
吾輩は猫である ―どこかにビューーン! 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、旅行へ行く時、ずいぶん前から行き先を決める。 どこへ行く。 何を見る。 何を食べる。 何時の列車に乗る。 宿はここ。 予定表は、隙間なく埋まっていく。 ところが、最近は妙な旅がある。 行き先を、自分で決めない。 人間はこれを、「どこかにビューーン!」と呼ぶ。 まず、四つの駅が現れる。 ここか。 あそこか。 いや、まさかそこか。 その中のどこかへ、新幹線で連れて行かれる。 しかも、最終的にどこへ行くかは、申し込んでからのお楽しみ。 吾輩は思う。 ずいぶん猫的な旅では ...
吾輩は猫である ―新津温泉 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 温泉と聞けば、山あいの宿を想像する。 湯けむり。 木造旅館。 川の音。 ところが、新津温泉は少し違う。 住宅街の中に、ごく普通の家のような建物がある。 人間はここを、新津温泉と呼ぶ。 吾輩は思う。 本当に、ここでよいのかと。 だが、中へ入れば、すぐに分かる。 匂いである。 石油。 かなり石油。 「少し香る」などという、上品な話ではない。 温泉なのに、どこか油田の気配がする。 それもそのはず。 この湯は、石油を掘っている途中で湧き出したという。 なるほど。 人間は、石油を探 ...
吾輩は猫である ―へぎそば 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、蕎麦まで美しく並べたがる。 一口ずつ、くるりとまとめ、木の器に整然と並べる。 人間はこれを、へぎそばと呼ぶ。 主に新潟で親しまれ、布海苔をつなぎに使うことで、独特のつるりとした食感が生まれるらしい。 吾輩は思う。 蕎麦とは、もっと無造作に食べてもよいのではないかと。 だが、目の前に並んだ姿を見ると、なるほど悪くない。 一口。 また一口。 最初から量が決まっているので、食べやすい。 猫で言えば、小皿に少しずつ分けられた餌のようなものである。 しかも、見た目は涼しい。 ...
吾輩は猫である ―おじさん、高校生に挑む 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 盤を挟めば、年齢は関係ない。 肩書きも、仕事も、人生経験も、いったん横へ置く。 そこにあるのは、八十一マスと、四十枚の駒だけである。 今日、三段のおじさんが、六段の高校生に挑んだ。 三段。 対するは、六段。 数字だけ見れば、なかなか厳しい。 しかも相手は、高校生である。 若い。 読むのも速い。 頭の回転も速い。 おじさんは、少しだけ言いたくなる。 「こちらには人生経験がある。」 だが、将棋盤は人生経験を一手も加点してくれない。 実に公平である。 対局が始まる。 序盤。 悪 ...
吾輩は猫である ―金利上昇 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、数字が少し上がるだけで、ずいぶん騒ぐ。 〇・何%。 一%。 数字だけ見れば、たいした差には見えぬ。 人間はこれを、金利上昇と呼ぶ。 吾輩は思う。 一%くらいで、なぜそんなに慌てるのかと。 だが、聞いてみると、話は少し複雑である。 お金を預ける者には、金利が上がれば、受け取る利息が増えることがある。 長い間、ほとんど増えなかった預金にも、少しだけ働いてもらえる。 これは、悪くない。 ところが、お金を借りている者には、話が変わる。 住宅ローン。 事業資金。 不動産投資 ...
吾輩は猫である ―若手成長 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 若い者は、最初から何でもできるわけではない。 知らぬ。 迷う。 間違える。 人間はこれを、若手と呼ぶ。 そして、少しずつできることが増えていく。 人間はこれを、成長と呼ぶ。 吾輩は思う。 成長とは、本人だけの努力ではないと。 任せる者がいる。 見守る者がいる。 失敗した時に、一緒に直す者がいる。 その環境があって、ようやく伸びる。 猫も、子猫の頃から上手に跳べるわけではない。 距離を読み違える。 着地に失敗する。 少し恥ずかしそうな顔をして、また挑む。 だが、何度も止めら ...
吾輩は猫である ―ポニーテール 編―
吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、長い髪を一つにまとめることがある。 後ろで束ね、軽く揺らし、歩くたびに動く。 人間はこれを、ポニーテールと呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん分かりやすい名前である。 馬の尻尾。 なるほど。 確かに、少し似ている。 だが、猫の尻尾とは少し違う。 猫の尻尾は、気分まで表す。 嬉しければ立つ。 警戒すれば膨らむ。 機嫌が悪ければ、ぶんぶん動く。 人間のポニーテールは、そこまで正直ではないらしい。 それでも、結ぶだけで印象は変わる。 少し軽く見える。 少し若く見える。 少し元 ...









