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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―ルンバ階段から落ちる 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 床の上を、丸いものが動いている。 音もなく、いや、少し音を立てながら、部屋の隅々まで進んでいく。 人間はこれを、ルンバと呼ぶ。 実に働き者である。 吾輩が寝ていても、人間が出かけていても、黙々と床を掃除する。 猫の毛も、埃も、食べこぼしも、容赦なく吸い込む。 吾輩は思う。 便利とは、こういうものなのだろうと。 だが、ある日。 ルンバは、階段の方へ向かった。 人間は言う。 「そこは大丈夫だろう。」 機械には、落ちないための仕組みがあるらしい。 なるほど。 吾輩も少し安心する ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―猫信託 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、自分より先に、猫が旅立つと思っている。 だが、人生とは、思い通りにはならぬ。 もし、人間の方が先だったら。 残された猫は、誰が守るのだろう。 人間はこれを、猫信託と呼ぶ。 お金だけではない。 誰が世話をするのか。 どこで暮らすのか。 病気になったら。 最後まで、安心して生きられるのか。 その約束を、元気なうちに決めておく仕組みである。 吾輩は思う。 愛情とは、今だけ可愛がることではない。 自分がいなくなった後まで、考えることでもある。 猫は、明日の心配はしない。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―猫、夏にへたる 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 暑い。 それしか、言葉が出ぬ。 朝から床に伸び、昼には動かず、夜になって、ようやく少し元気になる。 人間はこれを、「へたってるね」と言う。 その通りである。 猫は、無駄な体力を使わぬ。 暑ければ、寝る。 涼しい場所へ移る。 水を飲む。 それが、夏を生き抜く知恵である。 吾輩は思う。 頑張ることは、いつでも正しいわけではない。 暑い日に、無理をする。 眠いのに、休まない。 疲れているのに、「まだ大丈夫」と言う。 それは、賢さではない。 猫は、自然には逆らわぬ。 暑さには、暑 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―ブルーラジカル 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、歯を磨く。 朝も、夜も、毎日続ける。 それでも、歯周病は忍び寄るらしい。 最近、「ブルーラジカル」という言葉を、耳にするようになった。 新しい治療法として、期待されているそうだ。 吾輩は思う。 医療とは、魔法ではない。 新しい技術が生まれるたび、「これで全部治る」と期待したくなる。 だが、本当に大切なのは、毎日の積み重ねである。 歯を磨く。 定期的に診てもらう。 異変があれば、早めに相談する。 その上で、新しい技術が力を発揮する。 猫も、毛づくろいを欠かさぬ。 毎 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―歯周チェック 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、歯が痛くなってから、ようやく気にすることがある。 だが、口の中の異変は、痛くなる前から始まっている。 人間はこれを、歯周チェックと呼ぶ。 歯ぐきの色。 腫れ。 出血。 口臭。 歯のぐらつき。 どれも、小さな変化である。 だが、小さいからといって、軽いとは限らぬ。 吾輩は思う。 見えにくい場所ほど、定期的に見てもらう必要があると。 人間は、鏡で歯を見る。 だが、歯ぐきの奥までは分からぬ。 だから、専門家に診てもらう。 それは、悪くなったから行くのではない。 悪くなら ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―ウイルス性いぼ 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 小さなものほど、侮ってはならぬ。 最初は、ほんの小さな違和感。 そのうち治る。 そう思って、人間は放っておく。 人間はこれを、ウイルス性いぼと呼ぶ。 痛くない。 急がない。 だから、後回しになる。 だが、気づけば少し大きくなり、数も増えることがある。 吾輩は思う。 問題とは、大きくなってから現れるのではない。 小さいうちから、そこにいる。 猫も、毛並みの変化や、小さな傷を、よく舐めて確かめる。 人間も、体の小さな変化を、見逃してはならぬ。 「そのうち治る。」 その言葉が、 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―終戦記念日 編(人間は学んだのか)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 八月十五日。 人間は、少し静かになる。 八十年を越える昔、長く続いた戦争が終わった日である。 人間はこれを、終戦記念日と呼ぶ。 終戦。 なんとも穏やかな言葉である。 だが、そこへ至るまでに、あまりにも多くの命が失われた。 戦場で倒れた者。 空襲で家を失った者。 異国から帰れなかった者。 そして、帰ってきた後も、戦争を背負い続けた者。 人間は誓った。 もう二度と、こんなことは繰り返さないと。 吾輩は思う。 それから八十年以上も経ったのだから、さぞ人間は賢くなったのだろうと。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―エアコンクリーニング 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 ある日、いつもの風が止まった。 見知らぬ人間が来て、エアコンを分解し始める。 人間はこれを、エアコンクリーニングと呼ぶ。 高い所で、ガチャガチャ。 水が流れ、黒い汚れが落ちていく。 吾輩は少し離れて、様子を見る。 猫は、知らない音に敏感である。 知らない人にも、少し警戒する。 だが、終わってみると、風が変わる。 冷たいだけではない。 どこか、澄んでいる。 吾輩は思う。 汚れとは、毎日少しずつ積もるものだと。 昨日は気にならなかった。 今日も気づかなかった。 それでも、一年 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―第一種動物取扱業 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、動物を好きと言う。 だが、好きだけでは、預かることはできない。 人間はこれを、第一種動物取扱業と呼ぶ。 命を扱う者には、責任がある。 餌を与える。 健康を守る。 清潔を保つ。 逃がさない。 病気を広げない。 どれも、当たり前のようで、当たり前ではない。 吾輩は思う。 命とは、商品ではない。 一匹一匹に、性格があり、癖があり、好き嫌いがある。 同じ猫は、一匹としていない。 だから、決まりを守ることは、役所のためではない。 猫のためである。 人間は、資格を取れば終わり ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―夏休み帰省ラッシュ 編(新幹線、車、フェリー)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 夏になると、人間は一斉に動き出す。 駅へ。 高速道路へ。 港へ。 人間はこれを、帰省ラッシュと呼ぶ。 新幹線では、大きな荷物を抱え、指定席を探し、ホームを急ぐ。 車では、渋滞に並び、サービスエリアで休み、長い距離を少しずつ進む。 フェリーでは、車ごと船に乗り込み、海の上で時間を渡る。 行き方は違う。 だが、向かう先は似ている。 久しぶりの家。 懐かしい顔。 「帰ってきたね」と言ってくれる場所。 吾輩は思う。 帰省とは、移動することではないと。 自分の原点へ、少しだけ戻るこ ...