gonta

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/10/3

吾輩は猫である ―ブシロード株主優待 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、会社の株を買う。 値上がりを期待する。 配当を待つ。 そして時々、何か送られてくることまで期待する。 人間はこれを、株主優待と呼ぶ。 ブシロードにも、株主優待があるらしい。 オンラインストアで使えるポイント。 そして、イベントへの招待抽選。 なるほど。 株主なのに、楽しみ方が妙にエンタメ寄りである。 吾輩は思う。 これは少し面白い。 普通、株主になるというと、 売上。 利益。 配当。 株価。 何やら難しい数字ばかり眺めることになる。 ところがブシロードの場合、 プ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/10/3

吾輩は猫である ―住宅引越し 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 ある日、家の中に箱が増え始める。 昨日まで棚にあったものが、次々と姿を消す。 人間はこれを、引っ越しと呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん落ち着かない。 見慣れた匂いが減る。 いつもの寝床が動く。 人間も、妙に忙しい。 捨てる。 詰める。 運ぶ。 そして、また出す。 最初から動かさなければよいのではないかと、少し思う。 だが、人間には事情があるらしい。 広い家へ。 近い職場へ。 新しい街へ。 家族の都合で。 人生の節目で。 家を変える理由は、一つではない。 吾輩にとっては、理由 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―クレープ、生地売り切れ 編(縁がない)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、甘いものを食べたくなる時がある。 今日はクレープ。 頭の中は、もう決まっている。 生クリーム。 バナナ。 チョコ。 あるいは、少し大人しく、シュガーバター。 店へ向かう。 列も、それほど長くない。 これはいける。 人間は、そう思ったらしい。 だが、店の前に一枚の札がある。 「本日、生地売り切れ。」 吾輩は思う。 クレープ屋で、生地がない。 これは、なかなか致命的である。 猫で言えば、 「猫缶はあります。ただし中身はありません。」 と言われるようなものだ。 人間は、 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―どこかにビューーン! 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、旅行へ行く時、ずいぶん前から行き先を決める。 どこへ行く。 何を見る。 何を食べる。 何時の列車に乗る。 宿はここ。 予定表は、隙間なく埋まっていく。 ところが、最近は妙な旅がある。 行き先を、自分で決めない。 人間はこれを、「どこかにビューーン!」と呼ぶ。 まず、四つの駅が現れる。 ここか。 あそこか。 いや、まさかそこか。 その中のどこかへ、新幹線で連れて行かれる。 しかも、最終的にどこへ行くかは、申し込んでからのお楽しみ。 吾輩は思う。 ずいぶん猫的な旅では ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―新津温泉 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 温泉と聞けば、山あいの宿を想像する。 湯けむり。 木造旅館。 川の音。 ところが、新津温泉は少し違う。 住宅街の中に、ごく普通の家のような建物がある。 人間はここを、新津温泉と呼ぶ。 吾輩は思う。 本当に、ここでよいのかと。 だが、中へ入れば、すぐに分かる。 匂いである。 石油。 かなり石油。 「少し香る」などという、上品な話ではない。 温泉なのに、どこか油田の気配がする。 それもそのはず。 この湯は、石油を掘っている途中で湧き出したという。 なるほど。 人間は、石油を探 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―へぎそば 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、蕎麦まで美しく並べたがる。 一口ずつ、くるりとまとめ、木の器に整然と並べる。 人間はこれを、へぎそばと呼ぶ。 主に新潟で親しまれ、布海苔をつなぎに使うことで、独特のつるりとした食感が生まれるらしい。 吾輩は思う。 蕎麦とは、もっと無造作に食べてもよいのではないかと。 だが、目の前に並んだ姿を見ると、なるほど悪くない。 一口。 また一口。 最初から量が決まっているので、食べやすい。 猫で言えば、小皿に少しずつ分けられた餌のようなものである。 しかも、見た目は涼しい。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―おじさん、高校生に挑む 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 盤を挟めば、年齢は関係ない。 肩書きも、仕事も、人生経験も、いったん横へ置く。 そこにあるのは、八十一マスと、四十枚の駒だけである。 今日、三段のおじさんが、六段の高校生に挑んだ。 三段。 対するは、六段。 数字だけ見れば、なかなか厳しい。 しかも相手は、高校生である。 若い。 読むのも速い。 頭の回転も速い。 おじさんは、少しだけ言いたくなる。 「こちらには人生経験がある。」 だが、将棋盤は人生経験を一手も加点してくれない。 実に公平である。 対局が始まる。 序盤。 悪 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―金利上昇 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、数字が少し上がるだけで、ずいぶん騒ぐ。 〇・何%。 一%。 数字だけ見れば、たいした差には見えぬ。 人間はこれを、金利上昇と呼ぶ。 吾輩は思う。 一%くらいで、なぜそんなに慌てるのかと。 だが、聞いてみると、話は少し複雑である。 お金を預ける者には、金利が上がれば、受け取る利息が増えることがある。 長い間、ほとんど増えなかった預金にも、少しだけ働いてもらえる。 これは、悪くない。 ところが、お金を借りている者には、話が変わる。 住宅ローン。 事業資金。 不動産投資 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―若手成長 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 若い者は、最初から何でもできるわけではない。 知らぬ。 迷う。 間違える。 人間はこれを、若手と呼ぶ。 そして、少しずつできることが増えていく。 人間はこれを、成長と呼ぶ。 吾輩は思う。 成長とは、本人だけの努力ではないと。 任せる者がいる。 見守る者がいる。 失敗した時に、一緒に直す者がいる。 その環境があって、ようやく伸びる。 猫も、子猫の頃から上手に跳べるわけではない。 距離を読み違える。 着地に失敗する。 少し恥ずかしそうな顔をして、また挑む。 だが、何度も止めら ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/9/21

吾輩は猫である ―ポニーテール 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、長い髪を一つにまとめることがある。 後ろで束ね、軽く揺らし、歩くたびに動く。 人間はこれを、ポニーテールと呼ぶ。 吾輩は思う。 ずいぶん分かりやすい名前である。 馬の尻尾。 なるほど。 確かに、少し似ている。 だが、猫の尻尾とは少し違う。 猫の尻尾は、気分まで表す。 嬉しければ立つ。 警戒すれば膨らむ。 機嫌が悪ければ、ぶんぶん動く。 人間のポニーテールは、そこまで正直ではないらしい。 それでも、結ぶだけで印象は変わる。 少し軽く見える。 少し若く見える。 少し元 ...