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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―歯周チェック 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、歯が痛くなってから、ようやく気にすることがある。 だが、口の中の異変は、痛くなる前から始まっている。 人間はこれを、歯周チェックと呼ぶ。 歯ぐきの色。 腫れ。 出血。 口臭。 歯のぐらつき。 どれも、小さな変化である。 だが、小さいからといって、軽いとは限らぬ。 吾輩は思う。 見えにくい場所ほど、定期的に見てもらう必要があると。 人間は、鏡で歯を見る。 だが、歯ぐきの奥までは分からぬ。 だから、専門家に診てもらう。 それは、悪くなったから行くのではない。 悪くなら ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―ウイルス性いぼ 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 小さなものほど、侮ってはならぬ。 最初は、ほんの小さな違和感。 そのうち治る。 そう思って、人間は放っておく。 人間はこれを、ウイルス性いぼと呼ぶ。 痛くない。 急がない。 だから、後回しになる。 だが、気づけば少し大きくなり、数も増えることがある。 吾輩は思う。 問題とは、大きくなってから現れるのではない。 小さいうちから、そこにいる。 猫も、毛並みの変化や、小さな傷を、よく舐めて確かめる。 人間も、体の小さな変化を、見逃してはならぬ。 「そのうち治る。」 その言葉が、 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―終戦記念日 編(人間は学んだのか)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 八月十五日。 人間は、少し静かになる。 八十年を越える昔、長く続いた戦争が終わった日である。 人間はこれを、終戦記念日と呼ぶ。 終戦。 なんとも穏やかな言葉である。 だが、そこへ至るまでに、あまりにも多くの命が失われた。 戦場で倒れた者。 空襲で家を失った者。 異国から帰れなかった者。 そして、帰ってきた後も、戦争を背負い続けた者。 人間は誓った。 もう二度と、こんなことは繰り返さないと。 吾輩は思う。 それから八十年以上も経ったのだから、さぞ人間は賢くなったのだろうと。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―エアコンクリーニング 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 ある日、いつもの風が止まった。 見知らぬ人間が来て、エアコンを分解し始める。 人間はこれを、エアコンクリーニングと呼ぶ。 高い所で、ガチャガチャ。 水が流れ、黒い汚れが落ちていく。 吾輩は少し離れて、様子を見る。 猫は、知らない音に敏感である。 知らない人にも、少し警戒する。 だが、終わってみると、風が変わる。 冷たいだけではない。 どこか、澄んでいる。 吾輩は思う。 汚れとは、毎日少しずつ積もるものだと。 昨日は気にならなかった。 今日も気づかなかった。 それでも、一年 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/9

吾輩は猫である ―第一種動物取扱業 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間は、動物を好きと言う。 だが、好きだけでは、預かることはできない。 人間はこれを、第一種動物取扱業と呼ぶ。 命を扱う者には、責任がある。 餌を与える。 健康を守る。 清潔を保つ。 逃がさない。 病気を広げない。 どれも、当たり前のようで、当たり前ではない。 吾輩は思う。 命とは、商品ではない。 一匹一匹に、性格があり、癖があり、好き嫌いがある。 同じ猫は、一匹としていない。 だから、決まりを守ることは、役所のためではない。 猫のためである。 人間は、資格を取れば終わり ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/11

吾輩は猫である ―夏休み帰省ラッシュ 編(新幹線、車、フェリー)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 夏になると、人間は一斉に動き出す。 駅へ。 高速道路へ。 港へ。 人間はこれを、帰省ラッシュと呼ぶ。 新幹線では、大きな荷物を抱え、指定席を探し、ホームを急ぐ。 車では、渋滞に並び、サービスエリアで休み、長い距離を少しずつ進む。 フェリーでは、車ごと船に乗り込み、海の上で時間を渡る。 行き方は違う。 だが、向かう先は似ている。 久しぶりの家。 懐かしい顔。 「帰ってきたね」と言ってくれる場所。 吾輩は思う。 帰省とは、移動することではないと。 自分の原点へ、少しだけ戻るこ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/1

吾輩は猫である ―山の日 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 山は、静かである。 風の音。 鳥の声。 木々が揺れる音だけが、ゆっくりと時を刻む。 人間は、この日を山の日と呼ぶ。 山に親しみ、その恵みに感謝する日。 だが、山にはもう一つの記憶がある。 忘れてはならない、深い悲しみの記憶である。 ある夏の日。 多くの人が、家族のもとへ帰る途中だった。 楽しみにしていた再会。 約束していた「またね」。 その願いは、山へ消えた。 吾輩は思う。 時は、悲しみを消してはくれない。 それでも、人は生きていく。 残された人は、大切な人を想いながら、 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/2

吾輩は猫である ―猫シェアハウス 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 一つ屋根の下に、何匹もの猫が暮らしている。 朝になれば、それぞれが好きな場所へ向かう。 窓辺。 ソファ。 キャットタワー。 人間の膝。 誰も、同じ場所ばかり選ばぬ。 人間はこれを、シェアハウスと呼ぶ。 「みんな仲良しですね。」 そう言われることもある。 いや、少し違う。 仲が良い日もある。 少し距離を置きたい日もある。 猫は、無理をしない。 吾輩は思う。 一緒に暮らすとは、同じことをすることではない。 互いの距離を知ることだ。 眠りたい者は眠る。 遊びたい者は遊ぶ。 一匹 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/1

吾輩は猫である ―酷暑日 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 朝から、空気が重い。 陽が昇ったばかりだというのに、地面はすでに熱を持ち、窓辺にも逃げ場がない。 人間はこれを、酷暑日と呼ぶ。 暑いという言葉だけでは、足りないらしい。 少し歩くだけで、汗が流れる。 車の中は、あっという間に熱くなる。 道路も、屋根も、室外機の風も、街全体を温めていく。 吾輩は思う。 こういう日は、我慢してはならぬ。 猫は、暑ければ動かない。 涼しい床を探し、日陰へ移り、水を飲み、体力を使わぬ。 それは、怠けではない。 命を守るための、正しい判断である。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/8/1

吾輩は猫である ―日本人1.2億人割れ 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人間の数が、また一つの境を越えたらしい。 一億二千万人。 それを下回ったと、人間は数字を見つめている。 出生数。死亡数。高齢化。人口減少。 難しい言葉が並ぶが、要するに、生まれる者より、去っていく者が多いということだ。 吾輩は思う。 人が減るとは、数字が小さくなることだけではない。 学校から、子供の声が減る。 商店街から、店の明かりが消える。 バスの本数が減り、病院や介護を支える者も少なくなる。 一人減るたびに、その人が担っていた役割も、少しずつ失われていく。 人間は、子 ...