吾輩は猫である。名はないが、名は神のみぞ知る。 ここはヴァチカン。大理石の回廊に陽が差すと、吾輩はサン・ピエトロ広場の片隅で優雅に昼寝をする。天を仰げば大聖堂、振り向けば修道士、人間どもは皆、神を語って忙しい。 最近、枢機卿たちがざわついている。「次の教皇は誰か」――選挙が近いのだという。煙突から白い煙が上がる日、人間たちは「精霊の導き」とか「聖なる投票」とか、立派な言葉で盛り上がる。 だが吾輩から見れば、あれは“宗教版の椅子取りゲーム”である。帽子と杖をかけた玉座を巡って、老人たちが真顔で牽制し合う姿は ...