吾輩は猫である。名はまだない。だが、飼い主のブランケットを見れば、ふみたくなる衝動がこみあげてくる。 ふみふみ。前足を交互に出して、ぎゅっ、ぎゅっ。毛布が柔らかいと、つい本能が目を覚ます。 飼い主は言う。「出た、“ふみふみ”タイムね。赤ちゃんみたい」笑われようとも、これは吾輩の無言の祈りである。 あたたかい場所、やわらかな匂い、母の胸を探すような仕草。 ――けれど、今この瞬間、吾輩がふみふみしているのは、飼い主のひざの上だ。 忘れても 本能だけが 覚えてる ふみふみは甘えだけじゃない。信頼の証であり、安心 ...