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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/9/7

吾輩は猫である ― 加冠の儀 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。 今日は特別な日。朝から町は静まり返り、人々の装いは一段と改まっていた。遠くから雅楽の調べが響き、空気そのものが神聖な色を帯びている。 吾輩は群衆の後ろからそっと覗いた。そこには、若き者が冠をいただく厳粛な儀式――「加冠の儀」が行われていた。 冠はただの飾りではない。それは新たな責任の象徴であり、未来を背負う者に与えられる重みそのもの。人々は深々と頭を垂れ、その瞬間を見守っていた。 吾輩は毛並みを整え、しっぽを静かに下ろした。軽やかに跳ねる心を抑え、ただ厳かな空気に身を委ねる ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/31

吾輩は猫である ― 猫神様 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。だが、この町では「猫神様」と呼ばれている。 きっかけは偶然だった。ただ神社の屋根で昼寝をしていただけなのに、参拝に来た人が手を合わせ、「ご利益がありますように」と頭を下げたのだ。 次第に噂は広まり、受験生は「合格祈願に猫神様」、商人は「商売繁盛を猫神様」、恋する娘は「縁結びも猫神様」とやって来る。吾輩はただ、鈴虫の声を聞きながらのんびり毛づくろいしていただけなのに。 ある日、子どもが怪我をした足を引きずって神社に来た。吾輩はそっと足に寄り添い、しっぽでちょんと触れた。それだけ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/9/7

吾輩は猫である ― 元町白バイ体験 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。元町の石畳を歩いていたら、広場に人だかりができていた。眩しい白いバイクが並び、青い制服の警官たちが誇らしげに立っている。どうやら今日は「白バイ体験」のイベントらしい。 子どもたちが順番に跨り、記念写真を撮っている。エンジンは止まっているのに、金属の光沢はまるで生き物のように力強い。吾輩は興味に勝てず、警官の足元からスルリと飛び乗った。 「おや、猫さんも体験かい?」周囲から笑いが起こり、シャッターの音が続く。吾輩はハンドルの上で胸を張り、しっぽを高く掲げて「安全第一!」の顔をし ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/31

吾輩は猫である ― 浅草サンバカーニバル編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。だが、雷門をくぐれば人波に押され、どこからともなく笛と太鼓と歌声が響いてくる。今日は「サンバカーニバル」の日らしい。 大通りはまるで南国の舞台。羽根飾りを背負った踊り子たちが、眩しいほどの笑顔でステップを刻む。人々は声を合わせ、手を振り、熱気が路面を震わせていた。 吾輩はといえば、提灯の影に身を潜め、その光景を目を細めて眺める。猫にサンバは無縁と思われがちだが、実のところ、このリズムは心地よい。しっぽが自然と揺れ、肉球で小さく「タタ、タタ」と刻んでしまうのだ。 観客の少女が吾 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/26

吾輩は猫である ― 国際カラオケ 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。だが今日は不思議な夜に足を踏み入れた。看板に「KARAOKE」と輝くビル。飼い主に連れられ、吾輩ら4匹は小さな部屋に通された。 マイクが二本、モニターには歌詞が流れ、部屋の中には人間と、外国から来た客人たち。彼らは片言の日本語で注文し、笑顔で飲み物を差し出してくれた。 最初に歌い出したのは獅子丸。アニメソングを熱唱し、画面のキャラと同じポーズを決める。外国の青年が大笑いし、「Sugoi!!」と拍手を送った。 続いて葵が、静かなバラードを選ぶ。にゃあと声を合わせるだけなのに、不 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/24

吾輩は猫である ― アニメートで国際交流 編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。だが今日は特別な日、飼い主に連れられて「アニメート」なる聖地に足を踏み入れた。 ビルの中はポスターとキャラクターグッズで埋め尽くされ、あちらこちらから歓声が上がる。葵はキラキラした目で「可愛い〜!」と声を上げ、獅子丸はフィギュア棚に飛び乗ろうとしてスタッフに止められた。沙羅はというと、冷静に同人誌コーナーの行列を観察している。 ふと、隣で大きな声が響いた。英語と中国語が入り混じり、リュックを背負った海外の観光客たちが、熱心に推しキャラを語り合っている。吾輩のしっぽが動いた。― ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/19

吾輩は猫である ― 猫国宝編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。だが、この寺では「国宝様」と呼ばれている。 きっかけは数年前、観光客の老婆が言った「この猫、仏像みたいね」それを聞いた住職が笑い、本堂の縁側に吾輩専用の座布団が敷かれた。 朝は鐘の音とともに起き、昼は団体客の影に溶け、夕暮れには本堂の階段で、沈む陽を見送る。 写真を撮る者、拝む者、投げ銭する者。「ご利益ありますように」と言われるたびに、吾輩はあくびを返す。ありがたみとは、たぶん静けさの中にあるのだ。 ある日、テレビが来た。「この猫が国宝級の癒しです!」と。次の日から行列ができ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/16

吾輩は猫である ― ナンジャタウン編 ―

吾輩、信虎である。今日は4匹で人間のテーマパーク「ナンジャタウン」に潜入だ。猫が猫のまま堂々と入れるわけもないので、飼い主のバッグの中で移動し、入場口近くの猫用カートに乗り換えた。 まずは餃子スタジアム。鼻をくすぐる香りに、葵が目を輝かせる。「この匂い…絶対うまいやつ!」しかし吾輩らは猫。肉汁の香りだけで我慢だ。代わりに、猫用かつおスナックを取り出し、みんなでカリカリ音を立てる。 次はスイーツゾーン。ふわふわのパンケーキやカラフルなパフェが並ぶ。沙羅はじっとショーケースを見つめ、「人間って、甘いもの作りに ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/16

吾輩は猫である ― 猫のサロン(カットと染)編 ―

吾輩、信虎である。今日は年に一度の毛並みリフレッシュの日。飼い主が予約してくれたのは、猫専用グルーミングサロン。シザー音が響く、まるで人間の美容室のような場所だ。 「わぁ、いい匂い!」と葵は早くも鏡の前に座る。淡い毛色をさらに春色に染めるらしい。「私はラベンダーグラデーションに挑戦するの」と、尻尾をふわりと揺らしている。 獅子丸はというと、「オレはライオンカットだ!」と胸を張る。首周りだけたてがみのように残し、背中から尻尾にかけてスッキリ短く――仕上がりはまるで動物園から来た王様だ。 沙羅は静かにシートに ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/8/14

吾輩は猫である ―猫の歯医者 編―

吾輩、信虎である。昨日から右の奥歯がうずく。カリカリを噛むとき、少し力を入れられない。飼い主に見つかり、今日は動物病院の歯科へ行くことになった。 葵は心配そうに言う。「信虎兄さま、麻酔って怖くない?」獅子丸は面白がって、「銀歯にしてもらえよ!かっこいいぞ!」と笑う。沙羅は冷静に、「歯は一度悪くすると全身に響くのよ。しっかり治してらっしゃい」と背中を押してくれた。 病院に着くと、白衣の先生が口を開けて診る。「軽い歯肉炎ですね、スケーリングで大丈夫ですよ」その言葉に少し安心した。超音波の機械がキーンと鳴り、歯 ...