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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/16

吾輩は猫である ―人たらし 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 飼い主はよく言われる。「あなた、ほんと人たらしだよね」と。褒めているのか、呆れているのかは分からぬが、そのたびに吾輩は思う。――本当の人たらしは、ここにいる、と。 吾輩は特別なことは何もしていない。必要以上に鳴かず、欲しいときだけ近づき、撫でられたいときには、ほんの少しだけ背中を差し出す。 それだけで、人は勝手に心を許す。 宅配の人、来客、初対面の獣医殿。誰に対しても吾輩は同じ態度だ。警戒しすぎず、愛想を振りまきすぎず、ただ「ここにいる」。 すると人は言う。「この子、不思議 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/12

吾輩は猫である ―猫じゃすり 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 ある日、飼い主が「ついに買っちゃった!」と言いながら取り出した細長い道具。見るからに不思議な形をしている。裏側はザラザラ、表はなめらか。どうやらこれがウワサの “猫じゃすり” らしい。 吾輩は少し距離を置いた。――知らぬ道具には慎重である。しかし飼い主がやさしく声をかけ、そっと吾輩の頬にあてた瞬間、身体がびくりと震えた。 ザラッ……ああ、この感触――母猫の舌に似ているではないか。 毛並みが整うだけでなく、胸の奥がふわりと溶けるような安心感が広がる。これはただの道具ではない。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/11

吾輩は猫である ―ねこねこ王国 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 ある朝、目を覚ますと、いつものリビングではなく、金色の光に包まれた巨大な城門の前に立っていた。 門にはこう刻まれている。「ようこそ、ねこねこ王国へ」 どうやら吾輩、異世界に召喚されたらしい。 王国の中央広場では、千匹の猫がゆったりとくつろぎ、毛づくろい大会やにゃんこ相撲が行われている。食堂には終わらぬカリカリバイキング、王室にはちゅ〜るの泉まであるという。 そんな楽園の中心に、ねこねこ王国を統べる“王猫(キングキャット)”が現れた。白く長いひげ、気品あるしっぽ――どこからど ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/10

吾輩は猫である ―猫耳 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 人間界では最近、“猫耳”なるものが人気らしい。ヘアバンドだったり、コスチュームだったり、あるいはアニメの中で自由に動いたりする。 だが、吾輩から言わせれば――猫耳とは、ただの飾りではない。心の窓であり、気分のアンテナである。 興味があるときはピンと立ち、安心しているときはゆるりと倒れ、嫌な音がするときは左右に振れて知らせる。猫耳とは、言語より雄弁な“意思表示の装置”なのだ。 先日、飼い主がキラキラの猫耳カチューシャをつけて、「見て! 可愛いでしょ?」と言ってきた。吾輩はじっ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/10

吾輩は猫である ―猫の忘年会 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 十二月のある夜、飼い主がこたつで鍋を囲んでいる頃、吾輩はそっと窓から抜け出した。今日は特別な日――猫たちの、年に一度の 秘密忘年会 が開かれるのだ。 町内の猫たちが、神社の裏のあずまやに次々と集まってくる。茶トラ先輩は早くも酔ったような足取りで、「今年もいろいろあったニャ〜」としみじみしている。 黒猫のクロは、「今年の反省は“キッチン侵入の失敗回数”だニャ」と言い、キジトラのミケは、「わたしは健康診断を頑張ったニャ」と胸を張る。 それぞれの一年が、猫草をつまむ音や、カリカリ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/10

吾輩は猫である ―猫にやさしい暖房 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 冬が深まり、部屋の空気がひんやりしてきた。吾輩は飼い主の足元にまとわりつき、「そろそろ暖房を……」と無言の圧をかける。 飼い主は苦笑しつつスイッチを入れた。まず稼働したのはエアコン。あたたかい風が天井からそっと降りてきて、吾輩の背中を柔らかく包んだ。「これなら乾燥もしすぎないように加湿するからね」と、飼い主。ふむ、気が利いておる。 次に使われたのは、床暖房だ。これがまた極上のぬくもりで、床に身体が吸い付くように沈んでいく。まるで地面そのものが抱きしめてくれるようだ。吾輩が伸 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/8

吾輩は猫である ―長寿猫の秘密 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 近ごろ、飼い主がしみじみと吾輩をなでながら言った。「君も、いつの間にか立派なシニア猫だねえ…… なんでそんなに元気なの?」 ふむ。人間は気づいていないようだが、“長寿の秘密”にはいくつかコツがあるのだ。 まずひとつめ。よく眠る。寝ることこそ、猫の魔法である。歳を重ねれば重ねるほど、眠りは体と心を整える。飼い主が働いている間、吾輩が熟睡に勤しんでいるのは、決して怠惰ではない。 ふたつめ。好きなものを、好きと言えること。膝に乗りたいときは乗り、撫でられたくないときはスッと離れる ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/8

吾輩は猫である ―ペット保険 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 最近、飼い主が書類とスマホを行ったり来たりしながら、「どうしようかな……」と何度もつぶやいている。どうやら“ペット保険”という人間の制度を調べているらしい。 吾輩としては、食べて寝て遊んで、たまにひっかいて、いつもの日々を生きるだけであるが、飼い主はどうにも心配らしい。 先日、皮膚炎で病院へ行った吾輩を見て、気づいたのだろう。――命に値段はないけれど、  守るための備えは必要だ、と。 飼い主は獣医殿に相談し、「もしものとき、負担が軽くなるなら安心ですね」と言われたらしい。そ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/2

吾輩は猫である ―猫クエストIII 〜 魔王キャットタワー 編―

吾輩は猫である。名はまだない。 ある朝、目覚めると部屋の片隅にそびえる巨大な影があった。――キャットタワーである。だが、ただのタワーではない。 漆黒に光る柱、見たことのない高層階、てっぺんには禍々しい玉座。 その上に鎮座する者あり。その名も 魔王キャットタワー・ダークネス卿。どう見ても、飼い主が通販で買ったタワーが“魔界化”したらしい。 その声が響き渡った。「勇者ネコよ……IIIが始まるぞ……!」 吾輩は背中の毛を逆立てつつ、そっと飼い主を見た。飼い主はのんきにコーヒーを飲んでいる。どうやら、この戦いは吾 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2025/12/2

吾輩は猫である ―猫クエスト I &II編―

(冒険のはじまり) 吾輩は猫である。名はまだない。 静かな昼下がり、吾輩の家の押し入れが光った。気になって覗き込むと、そこには不思議な古文書。表紙にはこう書かれていた。「ネコ勇者求ム」 気づけば吾輩は、剣とマントを装備し、見知らぬ草原に立っていた。――どうやら異世界である。 そこへ、白ひげのフクロウ賢者が現れた。「勇者よ、ネズミ王がご飯ストックを奪った。 取り返してくれぬか。」 ご飯ストック……それは使命である。吾輩は胸を張って答えた。「よかろう。行こうではないか。」 旅の途中、スライム型ほこり軍団に絡ま ...