吾輩は猫である ―猫ドライ vs ウェット 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 今日の食卓(つまり吾輩の皿)は、いつになく緊張していた。 右側には“カリッ”と音を立てるドライフード。左側には“ふわり”と香り立つウェットフード。飼い主が腕を組んで言う。「どっちが好きなのか、今日はっきりさせようか」 吾輩は胸を張った。――この勝負、受けて立つ。 まずはドライフード。サクッ、カリッ。その歯ざわりはまさに職人の技。咀嚼のリズムが整うと、心まで規則正しくなるようだ。「これぞ、シンプルにして基本の味」と吾輩は感心した。 続いてウェットフード。ひと口で、肉と魚の香り ...
吾輩は猫である ―猫アレルギー 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 ある日から、鼻がむずむず、目がしょぼしょぼ。くしゃみをすると、しっぽまで跳ねるほどの勢いだ。毛づくろいをするたび、なんだか肌がひりひりして落ち着かぬ。 飼い主が吾輩の様子に気づき、「もしかしてアレルギーじゃない?」と眉を寄せた。アレルギー――それは人間だけの悩みだと思っていた。まさか猫の世界にもあるとは、驚きである。 動物病院で検査を受けると、獣医殿はやさしい声で言った。「少しだけ食物アレルギーがあるみたいですね。 フードを変えて、環境も整えていきましょう。」 飼い主は真剣 ...
吾輩は猫である ―猫の皮膚炎 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 最近、どうにも体がむずむずする。しっぽの付け根あたりをかくと、毛がふわりと抜け、赤くなっているではないか。これは……ただ事ではない。 飼い主が気づき、眉をしかめた。「ちょっと、これは皮膚炎かも」その声に、吾輩は胸がぎゅっと縮んだ。病院――あの独特の消毒の匂いと機械の音が頭をよぎる。 しかし、連れていかれた獣医殿はやさしかった。丁寧に毛をかき分け、「大丈夫ですよ、軽い炎症です。 薬を塗ればすぐ良くなります」と言った。 飼い主は熱心に説明を聞き、吾輩の背をそっと撫でた。その手つ ...
吾輩は猫である ―猫ラーメン 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 ある夜、飼い主が帰宅すると、部屋いっぱいに湯気と香りを広げた。どうやら人気店のラーメンをテイクアウトしてきたらしい。 その瞬間、吾輩の鼻先をとんでもない匂いが襲った。豚骨と醤油と魚介の、人間が「禁断の旨味」と呼ぶやつである。 吾輩は思わず飼い主の足元へ。しかし飼い主は困った顔で言った。「ダメだよ、猫は食べちゃいけないの。」 ――知っている。塩分も脂も強すぎるのだ。だが、この香りはどうだ。夜の空気を震わせ、人間の魂を揺さぶるほどの破壊力がある。 飼い主が麺をすすり始めると、ズ ...
吾輩は猫である ―猫とネズミ 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 ある晩、台所の隅でカサリ、と音がした。吾輩はしっぽを高く上げ、静かにその方向を見つめた。そこにいたのは――小さなネズミであった。 ネズミは震えながら吾輩を見上げた。「食べるなら早くしてくれ……」その覚悟の表情に、吾輩は思わず吹き出しそうになった。 「安心するがよい。吾輩は腹が満ちている。」そう告げると、ネズミはホッと息を漏らした。 やがて彼は、夜の台所での出来事や、人間の落としたパンくずの美味しさについて、早口で語り始めた。吾輩はそれを黙って聞いていた。 生きるとは、互いの ...
吾輩は猫である ―ChatGTP 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 最近、飼い主がパソコンに向かい、「ChatGTPに聞いてみよ」とつぶやくことが増えた。 ChatGTPとは、人間の疑問に答える人工知能らしい。しかし、どうもこのGTP、――どこか惜しいのだ。 飼い主が「今日の献立教えて」と打てば、「あなたの名前はカツ丼です」と返し、「仕事の相談をしたい」と言えば、「まず深呼吸してニャーと鳴きましょう」と返す。 ふむ……そのアドバイスは、猫界では正しいが、人間界ではどうだろうか。 とはいえ、飼い主は楽しそうだった。笑ったり、突っ込んだり、まる ...
吾輩は猫である ―猫プログラミング 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 ある日、飼い主がノートパソコンを開いたまま席を立った。画面には、不思議な文字列が並んでいる。if, else, for, {}……まるで人間が書いた“秘密の日記”のようだ。 吾輩は興味に勝てず、キーボードの上にそっと前足を置いた。すると画面が一気に動き出し、警告の窓がぽんぽんと増えていった。 ――どうやら“バグ”を大量に発生させてしまったらしい。 そこへ飼い主が戻ってきて叫んだ。「うわっ、コードが崩壊してる!!」吾輩は静かに尻尾を巻いた。プログラムとは繊細な生き物なのだな。 ...
吾輩は猫である ―原発再稼働 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 ある夜、飼い主がテレビを見ながらため息をついた。「また原発を動かす話が出てきたか……」画面では、議員たちが真剣な顔で討論していた。 吾輩には“原発”というものの仕組みはよく分からぬ。だが、その言葉の響きには、人間たちの不安と願いが同時に混ざっている気がした。 人は寒い冬に暖を求め、産業に電気を求め、未来の子どもたちには“安全”を願う。それらがぶつかり合う場所に、この問題は立っているのだろう。 吾輩はストーブの前に座りながら考えた。電気がなければ、この暖かさもない。しかし、あ ...
吾輩は猫である ―猫ノーベル賞 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 今日、飼い主がスマホを見ながら突然叫んだ。「ちょっと! 君、ノーベル賞とったらしいよ!」吾輩は尻尾を立てて驚いた。――何の賞である? 平和賞か? 医学賞か? それとも“昼寝学賞”か? どうやら発表によれば、吾輩の“人間のメンタルを安定させる行動”が世界に多大なる貢献をしたらしい。つまり、ひざの上で寝ること、喉を鳴らすこと、そっと寄り添うこと――それらすべてが科学的に証明されたというのだ。 授賞式では、スウェーデン王室の方々が拍手をしていた。吾輩は赤いカーペットの上を慎重に歩 ...
吾輩は猫である ―お米券 編―
吾輩は猫である。名はまだない。 ある日、飼い主が引き出しを整理していたときのことだ。ぽん、と机の上に小さな黄色い封筒が置かれた。「わあ、お米券だ!」と飼い主が声を上げた。 吾輩は首をかしげた。――米なら、いつも袋で買っているではないか。なぜ紙切れひとつで喜ぶのか。 飼い主は、吾輩の疑問を読んだかのように語り出した。「昔はね、お祝いとか贈り物とかに“お米券”をよくもらったんだよ。 今でも使えるし、なんだか懐かしくて嬉しいんだよね。」 ふむ……なるほど。人には、物そのものよりも、そこに添えられた“気持ち”が価 ...









