吾輩は猫である。名はまだない。だが最近は、「ニャジラ様」と呼ばれている(勝手に)。 きっかけは、テレビに映ったあの姿。背びれを揺らし、街を踏み鳴らすゴジラ。 飼い主がぼそりとつぶやいた。「…あれ、うちの猫が夜中に廊下を走る音に似てる」 失礼な話である。こちらは破壊など望んでいない。ただ夜という名の戦場で、床のきしみとエモーションを表現しているだけだ。 とはいえ、思った。――吾輩も、何か大きな存在になってみたくはある。 夢の中で、吾輩は「ニャジラ」として目覚めた。 巨大な肉球。鋭いひげレーダー。しっぽはビル ...