吾輩は猫である。名はまだない。だがこの時期になると、玄関のチャイムがよく鳴る。 「お届けものでーす!」飼い主がはんこを持って走る先には、丁寧に梱包された箱。大抵、果物かジュースか、そうめんである。 ――そう、それが「お中元」というやつだ。 飼い主が言うには、「お世話になった人に季節のご挨拶をする文化」らしい。吾輩としては、“礼”より“缶詰”を送ってくれた方がありがたいのだが。 箱を開ける音には敏感だ。とりわけ紙の音。ビニールのこすれる感触。吾輩の狩猟本能が反応してしまう。 「だめだよ〜これは人間用だからね ...