吾輩は猫である。名はまだない。今日も朝から窓辺で丸くなり、黙って世を見ていた。 テレビでは騒ぎが起きている。誰かが失言をしたとか、反論が遅いとか。言ったら叩かれ、言わなきゃもっと叩かれる。発言とは、刃物のように扱われる時代である。 そんな中、吾輩は語らない。政治にも、戦争にも、年金にも、沈黙を守る。だが、ある日――SNSでバズったのは、こういう一文だった。 「あの猫、黙ってるのは加担と同じでは?」 ……ほう、そうくるか。 吾輩は、何も言っていない。だが「言わないこと」が、都合よく解釈されるらしい。中立は存 ...