発売前から大きな反響があった絵本『ただいまねこ』が、2023年2月10日の発売から1か月あまりで増刷が決定しました。
年に一度お家に帰る日
一緒に過ごした時間は永遠に失われることのない、かけがえのないもの――
主人公は黒白猫のちびた。毎日ごろごろ、おだやかな日々を送っています。
そんなある日のこと、仲間の猫が「きょうは、年に一度のおうちに帰る日だよ」と、言い出しました。わけがわからず渡された三角の布を頭につけたちびたは、思い出します。
自分はあかりちゃんのうちの猫で家族とかけがえのない時間をすごし、年老いて死を迎えたことを──。
お盆の習慣も
本書には、ミヤザーさんが子どものときに体験したお盆の習慣も描かれています。
お盆にどのようにご先祖様を迎えるかは、地域によってちがいますが、あかりちゃんはご先祖様が道に迷わないよう庭先で「迎え火」「送り火」をたいています。
ちびたは、割りばしの脚をもったキュウリに乗って懐かしの家に戻り、ナスに乗ってあの世に戻ります。
みなさんは、キュウリは馬に、ナスは牛に見立てられていることをご存じでしたか?
昔の人たちが大切にしたご先祖様を敬う心を子どもたちにも伝えていきたいですね。
らみえるの実家でもお盆には迎え火と送り火を焚いているよ。
穏やかで静かな時間を描く
大切なものとの別れは、誰にとってもつらく悲しいものですが、本書のなかではその先に訪れる穏やかで静かな時間を描いています。
現在、学校現場でも重要視されている「デス・エデュケーション(死を通してよりよく生きることを考える教育)」にも最適な一冊。
猫好きな人もそうでもない人にも読んでいただきたい絵本です。
作品の紹介
作者のミヤザーナツさんに聞きました。
この作品はどのようにして生まれたのでしょうか?
チビ太と名付けた猫を、8年前に亡くした経験がベースになっています。 治せない病気であっという間でした。
同じ病気をもつ猫ちゃんの飼い主さんの参考になったらとブログを書きましたが、お寄せいただくコメントも見られないくらいまいってしまい、数年は猫を描くことにも抵抗がありました。
が、2020年のお盆の時期に、インスタグラム用にふと思い立って一枚の絵を描きました。
長年飼っていた猫を失った友人と「こんなふうに帰ってきてほしいね」とやりとりしたのを覚えています。
仕事部屋の壁に貼ったその絵を眺めては、いつか気持ちが落ち着いたときに、自分だけのためにこっそり本にしようと思っていました。
それから月日がたち、個展で出会った猫好きの編集者さんと「いつか猫の絵本をつくれるといいですね」という話になり、いくつか準備していたお話を少しずつ進めていました。
半年後、その編集者さんからご連絡がありまして……、せっかくの機会なので一番いいものをと、候補作を自らオーデション。 じつは、「ただいまねこ」とは別のお話でダミーを創ってお送りしました。
が、そのとき気になったのはチビ太の話です。
「この物語を誰かに読んでほしいと思ってない?」と考えている自分に気づいたのです。
チビ太の話は「創った」というよりも、ごく自然に「出てきた」お話です。
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ミヤザーナツさん『ただいまねこ』イベント情報
ミヤザーナツ みんなの「ただいまねこ」
絵本とミニ原画や版画の展示販売。サイン本も販売いたします。
[会期]2023年6月1日(木)~6月30日(金)
[時間]11: 00~18:00 ※最終日は17:00まで
[場所]ブックハウスカフェ内ミニマンスリーギャラリー (店内左奥の壁面 カフェカウンター横)
https://bookhousecafe.jp/
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ミヤザーナツさん著者情報
長野県生まれ。デザイン会社を経て、イラストレーターとして出版業界や広告業界で活躍。2020年より作家名を「宮澤ナツ」から「ミヤザーナツ」に変更。絵本に『らったくんのばんごはん』(作・坂根美佳/福音館書店)、『がんばれ、なみちゃん!』(作・くすのきしげのり/講談社)、『でんしゃにのるよ ひとりでのるよ』(作・村せひでのぶ/交通新聞社)。紙芝居に文部科学省選定『キジムナーにあったサンラー』(さえぐさひろこ 脚本/童心社) 、『アマガエルのきしょうよほうし』(キム・ファン 脚本/童心社)などがある。音楽を聴くこと、庭仕事、散歩、読書、生き物と接することが好き。