吾輩は猫である ― 兵庫県政篇 ―
吾輩は猫である。名はまだない。神戸の片隅に暮らして幾星霜、人間の営みにゃんとも奇妙なものを感じている。 最近、ご近所の飼い主たちが騒がしい。「知事がまたやらかした」「議会が揉めとる」などと井戸端会議で盛り上がる。吾輩は耳をぴくりと動かしながら、縁側で毛づくろいをするのみである。 兵庫県というのは、広い顔を持つ猫のような土地だ。北は雪深く、南は海風に吹かれ、東西には播磨、但馬、丹波、摂津、淡路――と、まるで多頭飼いの猫屋敷のような構成である。ゆえに、まとめ役たる知事の役割は重大だが、最近ではどうも「爪とぎ」 ...
吾輩は猫である ― 関税戦争篇 ―
吾輩は猫である。名はまだない。この頃、ご主人がやたらとカリカリを買い渋る。理由を問えば、「関税が上がってるからな」と鼻を鳴らす。何のことやら、さっぱりである。 しかしある日、吾輩はこっそりテレビという魔法の箱を覗き見た。画面の中で、人間たちが「輸入が高くなった」「うちの工場が困る」と吠え合っている。どうやら、国という大きな猫たちが「うちのモノが一番だ!」と睨み合い、互いの餌皿を引っ掻いているらしい。 なるほど、これは“にゃわばり争い”である。吾輩もかつて隣の三毛と魚の頭をめぐって小競り合いをしたものだ。だ ...